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Headlin News
[詳報]第1回「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」

日時:平成14年4月17日(水)17時15分〜

場所:東条インペリアルパレス(4階吹上)

委員名簿

救急振興財団副理事長・朝日信夫
全日本病院協会常任理事・石原哲
市立秋田総合病院中央診療部手術室長・円山啓司
大宮市医師会市民病院副院長・上嶋権兵衛
山梨県総務部長・北崎秀一
船橋市立医療センター救急救命センター長・金弘
日本救急医学会理事長・島崎修次
横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター病院長・杉山貢
出雲市外4町広域消防組合消防本部消防次長・高橋昭
日本病院会常任理事・土屋章
静岡県健康福祉部技監・土居弘幸
長岡赤十字病院副院長・外山孚
日本医師会常任理事・羽生田俊
千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学教授・平澤博之
杏林学園理事長・松田博青
京都市消防局安全救急部長・三浦孝一
東京消防庁救急部長・水(漢字不詳)保男
読売新聞社編集局解説部次長・南砂
仙台市消防局警防部長・森正志
日本看護協会副会長・森山弘子
日本医科大学附属病院高度救命救急センター長・山本保博

4月17日の検討会に欠席
東海大学法学部教授・宇都木(名不詳)
東京都医師会理事・木村(名不詳)

事務局メンバー
消防庁長官
消防庁次長
消防庁救急救助課
消防庁救急救助課長補佐

厚生労働省医政局指導課医療計画推進指導官
厚生労働省医政局指導課指導課課長補佐

委員の主な発言

消防庁救急救助課課長は、委員を紹介し、杏林学園理事長の松田委員に座長を委嘱した。

消防庁長官は、挨拶の中で、(1) 医師の具体的な指示のない除細動、(2) 医師の具体的な指示のもとでの薬剤投与、(3) 気管内挿管の3点について、検討会での議論を要請した。

消防庁救急救助課長補佐は、除細動に関して、救急救命士が「追加して受けるべき教育はない」との認識を示した上で、「脈なしの心室頻拍に対する除細動、自動式除細動器による除細動」を行えないか、検討しているとした。薬剤投与に関しては、エピネフリン、アトロピン、リドカインの名前をあげた。気管内挿管に関しては、現行制度で認められている「食道閉鎖式エアウェイ又はラリンゲアルマスクについては、搬送の際にずれやすいということで、気管内挿管のほうがより確実」との認識を示し、「薬剤投与と併せて認めるということで、薬剤の気管内散布も行うことができるようになり、静脈路を確保できないような患者に対しても、有効な手立てとなる」との考えを明らかにした。

厚生労働省医政局指導課指導課課長補佐は、気管内挿管について、厚生労働大臣告示に「気管チューブ」を追加することで、法律改正なしで救急救命士による気管内挿管が可能になることを説明した。厚生労働省としては、平成12年5月に「病院前救護体制の在り方に関する検討会」が、管内挿管と薬剤の投与については時期尚早と結論付けたことを上げた。電気的除細動については、メディカルコントロールが確立された上であれば、「包括的指示、つまり同時進行性の具体的指示に限る必要はないということで、ほぼ関係者間の合意がなされている」とした。

千葉大学大学院救急集中治療医学の平澤委員は、厚生科学研究で行った、救急救命士による適切な気道確保に関する研究の内容を説明した。この中で、「ラリンゲアルマスクやEGTAと比較して、パラメディクスによる気管挿管が、院外心肺停止事例全体の救命率向上に寄与したという医学的根拠は得られません」とした上で、「むしろ『Guidelines 2000』にも書いてあるのですが、パラメディクスによる気管挿管は、院外心肺停止事例全体の救命率が悪化するとの報告もありますし、米国心臓協会では、救急現場で行われる気管挿管の危険性を指摘していることも判明しました」との報告をした。しかし、「病態によっては気管挿管のほうがより有効なことも考えられ、これらの傷病者への対応については、今後、さらに検討を加える必要がある」との考えも示した。結論としては、「メディカルコントロール体制を構築し、救急救命士の教育・研究体制を充実させるとともに、事後検証を確実に行えるよう、つまりメディカルコントロールをちゃんとできるよう、措置する必要がある」としている。

東京消防庁救急部長の水(漢字不詳)委員は、4名参加している救急現場出身の委員を代表して、メディカルコントロールの実態を説明した上で、薬剤の投与について、「是非エピネフリン、アトロピン、リドカイン等の基本的な薬剤の導入はすべきではないか」とし、「心肺 停止の傷病者に対する薬剤の投与ということですが、四肢末梢静脈のうっ血等の状態、要は、血管が虚脱して表面に出てこないというようなことから、非常に困難あるいは不能の例が多いということで、気管挿管による散布の方法が有効ではないか」との認識を示した。さらに「救急救命士は心肺停止の傷病者に対してやるもので、麻酔科の医師等の、病棟あるいは手術室で行う気管挿管と異なり、反射もなく呼吸もなく、当然、教育は必要ですが、技術的にも対応可能ではないか」との考えを述べた。

仙台市消防局警防部長の森委員と、出雲市外4町広域消防組合消防本部消防次長の高橋委員山梨県総務部長の北崎委員からは、小規模な消防組織では現状でも救急救命士の数が足りなく、現在6ヵ月の救急救命士養成期間について、新しい養成プログラム策定の際に、現場に対する配慮を求める意見が出された。京都市消防局安全救急部長の三浦委員は、メディカルコントロール体制の充実を推進するように要望した。

大宮市医師会市民病院副院長の上嶋委員は、気管内挿管には消極的な意見が、医師の指示なしの除細動と薬剤投与については積極的な意見が述べられた。ドクターカーを運用している船橋市立医療センター救急救命センター長の金委員は、除細動については積極的な意見を、気管内挿管と薬剤投与については、強い反対意見を述べた上で、「集団的な違法行為が行われたことに対するけじめというのは一体どうなったのか」との指摘を行った。

救急救命士が違法行為を行っていたと指摘された地域の病院の代表である、市立秋田総合病院中央診療部手術室長の円山委員は、気管内挿管について、「気道確保の一つとして、救命士にもそれを選択できる余地を与えてもらいたい」との意見が示された。長岡赤十字病院副院長の外山委員は、「救急救命士から我々医療機関が引き継いだとき、ラリンゲアルマスクとか食道エアウェイが入っていた場合、我々は次にどうしても挿管をしなければいけないわけです。医学的には挿管のほうがいいということは、病院に到着したときの酸素濃度を測ってみればわかる。またそういうデータも出ているし、気管内挿管の技術さえあれば気管内挿管のほうがいい」との意見を述べ、「いま日本の医療の現状を考えると、ドクターカーを導入すればいいとかいろんな意見はあるでしょうが、我々医師が4分間で現場に行けるということは100%不可能です。したがって我々ができる、我々が持っている権利を一部、バイスタンダーと救命士に我々は委譲しなければならない。むしろ頭を下げて、やってくれと言わなければならないのではないかと思います」との意見を主張した。

日本医師会常任理事の羽生田委員は、ドクターカーの充実を訴え、違法な気管内挿管が行われていたことに対する検証作業が必要だとの認識を示した。日本病院会常任理事の土屋委員は、メディカルコントロール体制の充実を訴えた。全日本病院協会常任理事の石原委員は、都市部と地方の救急救命士の普及率を取りあげ、その格差について問題提起をした上で、救急救命士の業務範囲の拡大について個人的に全面的に賛成のスタンスを示した。救急振興財団副理事長の朝日委員は、この検討会の運営について、「大切なことは、救急現場で救命効果向上に資すると考えられたものについては、積極的、前向きに検討するという姿勢で、できない理由をいわばあれこれと挙げるのではなくて、その実施に必要な条件を明らかにしていく。と同時に、ここに集っておられる関係者の方が、その条件整備のために協力してみんなで取り組んでいこうという、この姿勢が何よりも大事だ」との主張を行った。

日本医科大学附属病院高度救命救急センター長の山本委員は、業務拡大について優先順位をつけるべきだとし、その順位は「皆さんが言っているとおり」と述べた。千葉大学大学院救急集中治療医学の平澤委員は、除細動等について早期の検討が必要との認識を改めて示した。日本救急医学会理事長の島崎委員は、アメリカでの事例を示して、パラメディックによる気管内挿管の失敗率が高いことに、警告を発した。さらにメディカルコントロールの充実とともに、救急救命士の業務拡大を行う必要性を強調した。

静岡県健康福祉部技監の土居委員は、救急救命士の業務拡大について、「決定するのは専門家の意見でもなく、あるいは業界の意見でも何でもなく、やはり国民なのです。国民が納得できる合理的な理由と、そういったハードルというものを是非、ご検討いただきたい」と意見を述べ、地域間格差については、地方自治体の取り組みを評価し、先進的な取り組みを支援する体制整備を訴えた。

最後に7人からなるワーキンググループを作ることが決まり、日本救急医学会理事長の島崎委員をまとめ役とし、救急振興財団副理事長・朝日委員、日本医師会常任理事・羽生田委員、千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学教授・平澤委員、日本医科大学附属病院高度救命救急センター長・山本委員、東京消防庁救急部長・水(漢字不詳)委員が指名された。

seatbelt.netの意見

松田座長の議事進行
seztbelt.netは、まず松田座長の議事進行に異議がある。事務局の官僚や千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学教授・平澤委員の発言時間を制限することはなかったが、救急救命士の代表者であり、業務拡大の推進役として重要なアクターである東京消防庁救急部長・水(漢字不詳)委員の発言を制限しようとしている。

水(漢字不詳)委員が、「今日は現地の消防本部から私をはじめ4名が委員にさせていただきました。消防の救急救命士に関係する問題ですので、現地の消防機関を代表して、現状と意見をかいつまんでお話します。今、資料をお配りしていますが3分では厳しいかなと思います。5、6分いただければと思います。」と述べたのに対して、「あなたが言っているのは、4カ所から出ているのを代表して1人で喋るという話ですか。」と質問をし、「現状と意見です。その後の個々の意見は別ですけども、総括的に現地での救急救命士の現状です。」と答えた水(漢字不詳)委員に、「現状は分かっているけれども、これだけの人が来て、夕方、集まっているのですから簡潔に、要領よくやってください。」と畳み掛けている。この検討会は医師が中心となっていることは確かだが、救急救命士は最重要アクターである。その救急救命士の代表である委員の発言時間を制限しようとした議事進行には、大きな疑問がある。

さらに松田座長は、大学教授には、「大学から大教授が3人出ております。大教授は大体話が長 いのが多いのですが、簡単にお願いします。」と軽口を叩いている。大学教授や医師に仲間意識があるのかもしれないが、救急救命士を軽く見る態度は、座長としての資質に疑問を呈さざるを得ない。この検討会の座長の使命は、医学に対する深い専門知識に立脚しなかけらも、医師にも救急救命士にも片寄らない立場で意思決定できる環境作りをすることである。

ワーキンググループのメンバー構成
次に、ワーキンググループのメンバーが、気管内挿管慎重派がほとんどである。特に、推進派の医師がワーキンググループに入っていないことには疑問がある。地方在住ということで、頻繁に上京できないのかもしれないが、専門的な議論をする場であるワーキンググループに、推進派の現場を知る医師がいないことは、議論が片寄る可能性を孕んでいる。医師ではあるが業務拡大を推進する立場の意見は、重要視すべきである。メンバー構成が不均衡であると思われるが、大学出身の三人の委員には、科学的見知に立ち、公正な判断をしてもらいたい。朝日委員には、第1回検討会で表明した積極的、前向きに検討するという姿勢を崩さないようにしていただきたい。

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