次に、科学警察研究所の上山勝氏が、科警研で行っている研究を紹介した。科警研で行っている研究の目的は、刑事責任追及のための事故捜査のために、科学的な分析を開発することだとした。特に、速度の推定、乗員の挙動、運転者の識別が、主な研究の対象であるとした。二輪車では、二人乗りの場合、両方や、一方が死亡した場合、どちらが運転者であったのか、ということが、生存者の証言以外にない場合が多いので、運転者の識別が重要である。
そして、二輪車と四輪車との衝突事故の再現のための衝突実験の模様を紹介した。この中で、二輪車の衝突では、フロントフォークや前輪の損傷度で二輪車の衝突速度が推定できる。フロントフォークや前輪がつぶれている間は、乗員は衝突していないので、この段階で、二輪車用のエアバックなどが考えられるとした。また、速度が低いほど、投げ出される可能性が高く、速度が高くなると、二輪車が四輪車に潜り込み、投げ出されないことが紹介された。また、二人乗りの場合、運転者は一人乗りの運転者と挙動が同じである場合が多いが、同乗者は、投げ出され後頭部に負傷する事例が多いという。またズボンの傷を調査すると、運転者と同乗者と負傷する部位が違うことがわかる。
次に、交通事故自動記録装置(TAAMS)で記録された実際の事故の映像を紹介した。現在までに、二輪車が関連する事故では、30例を収集している。衝突実験には費用がかかるので、シミュレーションなども活用している。TAAMSの映像を使って、シミュレーションを作成していることを明らかにした。さらにTAAMSは、事故車両のナンバーなどが記録できないため、事故捜査用のシステムではなく、事故調査用のシステムではないか、という指摘もあることを紹介し、プライバシーに配慮していることを強調した。
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