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第7回自動車安全シンポジウム・自動車の予防安全対策について

日時:2007年2月15日木曜日 14時から17時45分まで

場所:大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)

主催者挨拶

国土交通省自動車交通局技術安全部長・松本和良氏

交通政策審議会報告書における車両安全対策による交通事故被害軽減目標の紹介と、国土交通省の取り組みの紹介。

ISOFIX、後部座席中央3点式シートベルトの装備義務付けが行われた。大型トラックの被害軽減ブレーキ、ドライブレコーダー、アルコールインターロック装置の装着義務付けなどが視野に入っている。

「今後の車両安全対策の方向性」

国土交通省自動車交通局技術安全部技術企画課国際業務室長・和迩健二氏

平成18年6月交通政策審議会報告書を踏まえての報告。依然として交通事故の現状は厳しいものがある。自動車による死者が、交通事故全体の9割を占める。まだまだやるべきことがある、という認識。自己分析、効果評価を行い、合理的な政策を推進する。自動車安全対策のサイクルを回している。

衝突時の乗員保護性能の飛躍的向上は達成した。新たなブレークスルー、予防安全対策に真剣に取り組むことが重要だ、ということが報告書のポイント。予防安全の中身は、ASVの活用。

成熟した予防安全技術、例えば大型トラックの被害軽減ブレーキなどに対するインセンティブの導入を4月から始める。ハイブリッド車の衝突時の感電事故防止の安全基準の策定。ドライブレコーダー、イベントレコーダーを、効果評価に活用する。

通信を使う技術の開発、導入を。インフラ・車両協調などには、官民の連携、省庁間の連携が重要。事故ゼロ社会の実現に、競合的、連携的に進める必要がある。

国際的な連携によるヘッドレストの安全性の向上や、飲酒運転の根絶に向けて、アルコールインターロックシステムの技術課題の検討を進めている。

安全は、世界中の政府、メーカー、ユーザーにとって、重要なことである。アジア諸国も参加している。国際的な協力関係も重要。

「今後の車両安全対策の方向性」

財団法人日本自動車研究所安全研究部主席研究員・小野古志郎氏

自己分析部会、安全技術検討会の役割・活動の紹介。継続的な車両安全対策の検討、基礎的な事故統計資料の整備、短期的な課題の抽出、長期的な視点からの事故発生傾向の把握。

軽自動車以外は事故は減少傾向にあるが、軽自動車は1.6倍になっている。軽自動車が関与した事故が顕著に増加。軽自動車の死亡率も高くなっている。重点分野として、ドライブレコーダーを用いた追突事故の分析、出会い頭事故の被害提言、コンパティビリティに関わる分析。

200台のタクシーにドライブレコーダーを搭載。先行車の走行状況の把握が可能に。自車と先行車の車間距離と走行速度の関係を「衝突余裕度」として指標を作り、それを評価する。追突の危険性が高まったときに、運転者に警告を発する必要性を認識できた。

安全基準検討会は、技術開発状況に関する基礎データの整備、規制実施項目の抽出、規制の効果の評価などを行っている。基準化決定項目、次期基準化検討項目、研究項目に分類。さらに、基準化候補の追加検討項目を設定、順次、基準化を実施。ハイブリッド車・電気自動車の衝突安全性、ドライブレコーダー、ディタイム・ランニング・ライトなど。

被害軽減対策の継続・充実と予防安全技術の普及・促進を目指して、より的確な効果評価を。

NHTSA's VEHICLE SAFETY RULEMAKING PRIORITIES 2005-2009

米国運輸省自動車交通安全局(NHTSA)交通専門官・マーティン・コウベク氏

NHTSA(ニッツァ)の位置づけと役割。運輸省の元にある。1966年創設。4つの法律に基づく。8億ドルの予算、600人の職員。10カ所の地方事務所。車両研究試験センターがオハイオに。

NHTSAの使命は、人命を守ること、被害を軽減すること。年間43,000人の犠牲者。最近は、死者数が増えている。しかし、1億台マイルあたりの死者数は減少している。4歳から34歳までの主要な死因となっている。

交通事故の日米比較。歴史的に両国とも、致死率は改善。日本の方が大きい成果。日本政府、業界の決意の表れ。PDCサイクルの正しさを示す。状態別の死者は、日本は比率は均衡しているが、米国では乗員が圧倒的に多く79%。交通安全における三要素別では、人的要因が90%、道路環境要因が7%、車両要因が3%。人的要因に注力すべき状況。予算を重点的に投入。

州政府と協力し、助成金を支出し、シートベルト、チャイルドシートの装着率向上、飲酒運転、薬物運転の防止に取り組んでいる。

救急医療、緊急ダイヤル911番の改善も。国際会議で、効果を上げた施策の紹介もしている。

NHTSAは、国土交通省を羨ましいと思う。NHTSAは州の政策に対する管轄権がない。全米に管轄権を持つ、日本の警察庁に相当する組織もない。全米で1100の自治体警察との協力が必要。州との協調は上手くいっている。飲酒運転有罪者に対するアルコールインターロック装置の装着義務付けなどが、一部の州との協力で成功。

衝突安全性能基準の制定をしている。国連の場で、欧州、日本とも協調している。NCAPもある。

NHTSAの政策策定過程。2005-2009車両安全立法と基礎研究優先事項。NHTSA WebSite

衝突部位別死者数。オールオーバーは、事故数は少ないが、死者数は多く、33%を占める。コンパチビリティとオールオーバーが優先事項。スピン防止装置などを導入。

コンパチビリティの改善。乗員の保護。FMVS214の改善。エアバッグ、カーテンエアバッグの導入。平均車高ではなく、新たな指標で衝突安全性能を測定する必要を認識。

ロールオーバー対策は、スピン防止装置はSUVでは65%の車両単独衝突事故を減少させる効果がある。2トン以上の車両への装備義務づけに動いている。側方衝撃関連基準の改正、ガラスの改善。

後方視界の改善で、子供を守る。フロントスクリーンのぎらつきの防止。パートナーシップの重要性。

予防安全装置の効果評価に向けて

東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻教授・鎌田実氏

予防安全に取り組まなければならない。事故データ、事故に至るまでのデータをしっかり、科学的に、定量的に分析したい。ドライブレコーダー、EDRの出現。フィールドで、一般のデータを採集可能。ヒヤリハットの記録、データベースの作成。安全運転指導に活用。事故処理の時間の削減。

マクロ分析、ミクロ分析を展開。東京と札幌で100台規模でデータを採集。車載カメラ映像の紹介。

ドライブレコーダーの限界。記録する条件をどのように設定するか。スピンを感知できない。ヨーレート・センサーが必要。ヒヤリハットは件数が多いので、データを取りやすい。ヒヤリハットと実際の事故は、近似している。ヒヤリハットを解析して事故防止に活用できる。

自動ブレーキを、もっと早めに強く作動できないか。

パネルディスカッション

堀野氏。ドライブレコーダーを分析すると、自転車の事故・ニアミスが多かった。自転車の安全不確認、一時不停止などか原因。一般には車が原因だと言われているが、ドライブレコーダーを分析すると、自転車が原因の事故が多い。飛び出しを防ぐ環境づくり。けもの道をなくす。

タクシーの出庫時間と高校の始業時間が関連している。タクシーと高校生の交点が事故発生地点という仮説。警視庁の交通事故発生マップを見ると、一致している。地下鉄駅と大企業のビルの間。

岩越氏。JAF MATE社ホームページのアンケート。JAFセーフティトレーニング参加者のレクサス LS460のプリクラッシュセーフティー、VDIMに対するアンケート。効果は体感できるが、マシンとのマッチングが心配。ドライバー一般を把握して、ASVの推進が必要。

JAFが実験した後席シートベルト、非着用の実験映像の紹介。まず後席シートベルトを着用しているかを会場に尋ね、シンポジウム出席者の3割程度しかシートベルトをしていないが、岩越氏は、「本当にしていますか。JAFの調査では1割以下だ」と疑問を呈した。

高橋氏。予防安全技術の紹介。AFSの紹介。横滑り防止装置。被害軽減ブレーキ。車線維持警報装置。開発中の車車間通信による予防安全。インフラ協調型の通信による警報装置。自工会にとっての課題。(1) 普及拡大。先進安全装置は1%以下の普及率。(2) 予防安全技術の効果評価。ドライブレコーダー、事故分析精度の向上。(3) 新技術開発への取り組み。ASVへの参画。

石川氏。ドライブレコーダー、EDRの紹介。安全ポテンシャルをどうあげるのか。人の安全ポテンシャルを向上させるツール。その一つがドライブレコーダー。米国ではEDRが事故分析に活用されている。データ解析装置CDRの市販が契機。EDRは国内でも搭載されている。年内では100万台規模。ビジョンゼロへのブレークスルーのツール。20%の死傷者数の低減が可能ではないか。

片山氏。予防安全装置が作動してい「たら」。予防安全装置が作動していなけ「れば」の、「たら・ればシミュレーション」。予防安全装置の効果の推定。記録データ、指標、判定。「衝突余裕度」の指標。急ブレーキを踏んだときに止まれるのか、止まれないのか、という指標。技術的には可能性は高い。予防安全装置作動時の記録。データをいかに多く蓄積するかが課題。

第1部に対する質問への回答。和迩氏。

(1) ドライブレコーダーのデータは標準化されているのか。(2) 車内LANであるCANに流れるデータを取り出したい。(3) 被害軽減ブレーキに対する補助金は年々削減されるのか。

標準化ではなく、活用するには、どのような要件を満たすべきか、という議論と提案をする。単にCANにアクセスしたいという話ではなく、アウトプットに何が必要かという議論をするので、その構造などは議論していない。被害軽減ブレーキの補助金は、装置価格の半額を補助する。装置価格が削減されれば、補助金も削減されるが、ユーザーの負担も下がるメリットもある。

(4) EDRのデータは、誰がどのように分析し、どのように利用するのか。個人情報保護法には触れないのか。

EDRは、衝突があったときのデータを活用する。従来の事故分析のシステムに組み合わせる。使い方を含めて検討している。プライバシー保護法との関係も、EDRのルールに入っている。プライバシー保護法を優先する。EDRは、ドライバーの行動ではなく、車両制御のデータを中心に得られる装置である。

吉本氏。課題としては、3つある。(1) 予防安全技術は効果があるのか。(2) 効果を調べる方法はあるのか。(3) ドライブレコーダーの効果は、いろいろあるが、それをどのように認識するのか。予防安全装置の開発は、効果を確信して推進しているのか。

高橋氏。エンジニアとしては、意地でも効果があると確信して開発している。予防安全は効果を測定するのが、衝突安全よりも難しい。特にヒヤリハットの状況で止まったときは、予防安全技術の効果の測定が難しい。

堀野氏。プロドライバーは、日頃のヒヤリハット経験により、「予防」安全運転をしている。その経験を一般ドライバーに活用できないか。データを蓄積し、プロドライバーのノウハウを聞き出し、一般ドライバーの運転技術支援に活用できる。

吉本氏。一般ドライバーは、どう反省するのか。

堀野氏。個人的にドライブレコーダーを搭載している。監視されているという意識はなく、むしろ、死んでしまっても、本当のことがわかる、わかってもらえると感じている。皆さんも同様に感じるのではないか。

石川氏。安全運転を意識している人は変わらないのではないか。そうではない人には効果がある。

岩越氏。ドライブレコーダーのデータを、自分のため以外に使われるのはドライバーの理解を得られないのではないか。

和迩氏。アルコール・インターロックについては、効果と費用を考慮すると、常習者のみに義務づけするのは考えられる。

岩越氏。ASVはカスタマイズ商品だと思う。ドライバー個々の安全運転レベルを標準に近づけるために、予防安全技術を使う。それが理想。

和迩氏。新技術の導入の負の側面にも目を向けなければならない。信頼性も重要。機器とドライバーのインターフェイスの部分。警報をドライバーが上手く使えるのか。情報過多の問題。ドライブレコーダーはドライバーの行動を知る手がかりになる。

(2007/02/15)

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