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「第9回自動車安全シンポジウム・高齢社会への対応」

日時:2008年12月3日水曜日 13時30分から17時30分

場所:日本消防会館・ニッショーホール(東京都港区)

今後の車両安全対策の方向性

国土交通省自動車交通局技術企画課国際業務室長・島雅之氏

全体に占める高齢者事故が増加している。今後、高齢者が増加し、運転免許を保有する高齢者も増加することが予測される。高齢者対策が重要になっている。高齢者が被害者となる事故、加害者になる事故の対策、双方が必要。加齢により、事故の被害が拡大することにも対策が必要だと、運輸政策審議会答申。

例として、走行音が静かな電気自動車・ハイブリッド自動車対策。ブレーキアシスト装置やナイトビジョン。高齢者を考慮した乗員保護装置。バス車内外での高齢者転倒事故。車両接近通報装置の開発、ブレーキアシストの開発、技術基準の国際協調活動、高齢者に適したナイトビジョンシステムの調査。設計標準値から外れた運転姿勢での事故の分析調査。

モビリティ向上の取り組みとして、新しい移動手段「パーソナルモビリティ」の開発。現行法規との整合性などを検討する。

事故分析部会と安全基準検討会の活動報告と今後の活動方針

東京大学名誉教授・吉本堅一氏

事故実態の把握・分析、安全対策の実施、対策の効果評価の「自動車安全対策のサイクル」を回すという方向性で活動。

交通事故総合分析センター(イタルダ)のマクロデータを使った分析。255項目の分析。自転車での安全対策の検討を今年度実施。高齢ドライバーが関与する事故が増加傾向。大型車による事故も被害が大きくなる。今年度は高齢者と大型車が関連する事故を分析。

基準化、基準化準備項目を検討。基準化の妥当性を検討している。規制の強化と効果的な実施に結びつけている。

ドライブレコーダー、EDRの開発、事故分析の精度向上。効果予測による安全基準の見直しと充実を図りたい。

脳機能の活性化と自動車の安全

東北大学加齢医学研究所教授・川島隆太氏

脳の研究が進展することで、高齢者の交通事故について、わかり始めた。安全運転の鍵は、前頭前野である。前頭前野が帰納することが、交通安全に直結する。しかし、加齢とともに前頭前野は衰退する。前頭前野のピークは20歳である。二重課題におけるテストにおいて、加齢の影響がはっきりとわかる。

数や文字を扱うと、前頭前野が活性化する。学習療法が医学的に優位で、社会保障費も削減できるという研究結果もある。実年齢で運転者などを規制するのは、脳科学的にはおかしい。

「高齢者の安全」への取り組み

社団法人日本自動車工業会安全・環境技術委員会安全部会部会長・高橋信彦氏

高齢者対策は、8つの自工会重点課題の一つ。高齢者の問題は広域に渡っている。認知・判断段階では、高齢者に見落としがある。操作段階では、回避行動がとれない、ハンドルを切れていない。

高齢者の視認行動の研究。ライトの光度の上限や、可変配光ライトの設計などに研究成果を活用したい。事故になると、全部位で加齢とともに、傷害を受けやすくなる。加齢に伴って、胸部を受傷するケースが多い。加齢とともに骨が脆くなる。

自工会として、人体FEMの開発で対応。体格と年齢をスケーリングできるようになる。骨密度や骨格形状の変化を人体モデルに反映可能になる。

自工会では、高齢者向けの交通安全トレーニングを開発している。それには脳トレも含まれている。自工会のホームページからダウンロード可能。

パネルディスカッション「高齢社会への対応」

【堀野】バス車内事故防止キャンペーンを実施した。高齢乗客の事故が多発していた。キャンペーンを実施したところ、事故が減少した。原因が分かり、対策をし、効果が出るということが望ましい。

高齢者を焦らせない、車内のステップ、段差などの事故原因の排除、ユニバーサルデザインが大切。Slow Lifeを容認する社会、ユーザーニーズに応じた車両、道路などの開発、産官学民のコラボが必要。

【溝端】パーソントリップ調査をすると、高齢者がクルマを運転するようになっている。高齢者は気分は元気だが、体は痛んでいる。休むベンチがない道路、駅が問題。新しい選択肢が交通システムに必要。薬を飲む高齢者には、血圧の降下剤で眠気を催したりするので服薬指導も必要だろう。

【岩貞】パッシブ・セーフティを見直す時に来ている。シートベルトやエアバッグで傷害を受けるケースがある。衝突評価のダミーが日本人の標準と比較して大柄となっている。救急隊、救命救急センターと連携した事故調査が必要。チャイルドシートの着用率が低迷している。ジュニアシートの必要性も認識されていない。妊婦にもシートベルトを着用してもらう必要。情報提供を積極的に行い、ユーザーに協力してもらうことも必要。

【藤川】高齢ドライバーを調べよう。客観的なデータが必要。高齢者の基礎的な特性はわかってきたが、安全に関係する行動は未だ不明のまま。ドライブレコーダーを使った事例収集と、テストコースを使用した実験。できることをすぐに始める必要。

【島】加害高齢者が増加しているので、経済的にも新たな負担が生じている。対策を実施することは必須。

【川島】加齢で感覚器は衰えるが、リカバーができる。認知力は変わらないことが多い。問題は前頭前野で、前頭前野が衰える。前頭前野のリソースの減少を補えば、事故を減らせる。加齢で心身機能は衰える。衰えを補うクルマが必要だが、楽になると、心身機能が衰えてしまうというジレンマがある。

【堀野】加齢すると、個人差が大きくなる。一律に年齢で規制するのはおかしい。運転者を認識して、必要な人にはブレーキをアシストしたりする車両の開発が必要。

【島】運転支援システムは実用化している。車と人間の役割分担の整理が必要だと認識している。

【藤川】運転支援システムでは、システムに依存することと、複数の警告を受けた場合に、ドライバーが混乱することが心配だ。

【川島】人工音だと、音の発信位置を認識し難い。危険が迫っている方向から警告音が鳴り、直感的に危険が迫っている方向が分かるようなシステムが必要。

【高橋】人間工学的な取り組みは積み重ねている。ITSも進んでいる。心身の衰えを手助けするシステムは、是か否か、という大きな問題がある。車の知能化をどう進めるか。

【川島】安全運転を妨げない範囲で、運転行動に、人間の脳にバリアとなるものを入れられないか。運転しているうちに、知らず知らず脳が強化することが可能になるかもしれない。

【堀野】日本が率先して、高齢者のダミーを開発すべき。

(2008/12/03)

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