運転支援システムの導入に関する法律問題を扱った。まず、司会の青木教授が、日米欧における運転支援システムに対する温度差を指摘した。米国では、PL法の関係でメーカーは運転支援システムに積極的ではないが、欧州では、eSafety計画を積極的に推進している。
まず、米国の弁護士であるBishop氏から、米国の法律問題の報告があった。
全般的な課題として、誤使用と故障時の問題が指摘された。米国の法制度には、新しい技術を積極的に導入する側面があることを紹介した。Adaptive
Cruise Controlが、8000台から1万台、米国で販売された車両に装備されていることを例示した。だが、新しいシステムの多くは、日本もしくは欧州で初めに導入されることも指摘した。Pre
Crash Safety Systemの導入は、さらなる運転者支援システムへの、試金石となることを紹介した。
さらに、ITS計画に対する米国議会の動きと、NHTSAにおける規制制定計画を紹介した。
パネル討論では、片岡氏が、製造物責任法の概略を紹介した。ITSのソフトウェアにも、製造物責任が生じるとした。ITSで重視されるのは、説明、指示、表示上の欠陥であろうと指摘した。フィンランドで、ABS搭載車と非搭載車を用いて、実地教習を行っている事例を挙げ、ITS搭載車については、実地教習を行うべきと提言した。
近藤氏は、「ACC搭載した車両で、意図せずACCが非作動の状態で、追突事故を起こした場合」の仮想の事例を提示し、それにまつわる法律問題を紹介した。事例1として、落雷によってACCが、作動停止になった場合を挙げた。事例2で運転者の不注意で、ACCを解除してしまった事例、事例3で、運転者がスイッチを正確に操作せず、装置が機能しなかった場合を挙げた。
まず、形式認定をする行政の責任として、認定制度が必要ではあるが、行政が全てを知ることはできず、責任を追求することは難しい。メーカーは、設計思想を明確にし、それをユーザーに伝える責任があると指摘した。ユーザーの責任として、道路交通法上の前方注意義務は免れないだろうと指摘し、新しい技術の導入による便益と、潜在的な危険についてパランスを図る制度を創設する必要性を提唱した。
山川氏は、現在の日本の法制度での、政府、メーカー、ユーザーの責任の関係を説明した。日本とドイツを比較して、法制度の基本はドイツと類似していると指摘し、日本の制度と米国の制度とは違う点が多いとした。
型式認定の制度とメーカーの関係については、型式認定の取得が、メーカーの製造物責任の免責の要因にはならないとした。製造物責任は、ユーザーのみならず、被害者に対しても責任を負う可能性があるとした。政府については、国家賠償法により、責任を追及される可能性があることを指摘した。ユーザーは、道路交通法70条の安全義務を挙げ、過失によって事故を起こした場合は、損害賠償責任を負うとした。この義務は、ITSを装備した車両を運転した場合においても、同様の義務を負うと指摘した。
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