松本氏は、不慮の死は、死因として全年齢では5位になるが、1歳から29歳の年代では第1位であると紹介し、救命救急医療には、地域間格差があることを指摘した。
外傷患者の死亡時期には、即死、数時間、数日、数週間の各段階があるが、「数時間」の段階は、改善の余地があるとした。「予測生存率」において、50%と判断されていた患者のうち、死亡してしまった事例が半数、80%と判断されたにもかかわらず死亡した事例が23.9%あることを挙げ、救命救急医療の改善の必要性を述べた。
システムとしては、救急救命士が行う処置の標準化、患者搬送システムの改善、外傷センターの整備の3つが考えられるが、ここでは、患者搬送システムの改善、すなわちドクターヘリコプターの事例を紹介した。
ドクターヘリは、現在全国で7箇所で運用されており、千葉の事例では、ドクターヘリ出動の要請から3分以内に離陸できる体制を整えている。そして学校の校庭などの臨時へリポートに着陸、そこに待機していた救急車に医師が乗り込み治療を行い、ドクターヘリに移動させ、病院に搬送する。ドクターヘリの搬送事例の中で、交通事故は、全国では23%であるが、千葉では28.9%と全国平均よりも多くなっている。
ドクターヘリの導入により、病院までの搬送時間には、大きな変化は見られなかったが、医師による治療の開始までの時間は、救急車では平均57分だったが、ドクターヘリでは29分にまで短縮した。これにより、予測生存率が79%から85%に改善した。さらに、生存の可能性が低いと考えられる事例でも、生存するケースが見られたとした。
ドクターヘリを使い、病院間の転院をする事例では、救命率が低くなり、これは「外傷バイパス」と呼ばれている。従って、事故現場で搬送先病院を適切に判断することが重要であるとした。
最後に「外傷センター」の説明を行った。外傷センターは、がんセンター、脳卒中センター、循環器病センターに続くもので、外傷患者を集中させることで、急性患者から、亜急性期、リハビリまでを、一貫して行える施設である。 |